新技術『バーチャルプロダクション』を支えるDAIV、
現場のセッションが生み出したMV

監督
YKBX

カメラマン
井村 宣昭

マッチムーブアーティスト
加藤 泰裕

アーティストASCAの新曲『進化論』のMV撮影風景

アーティストASCAがリリースした最新アルバム「百希夜行」に収録されている新曲『進化論』のMV制作に密着。
今回のMVは、LEDウォールに映像を映し、現実の空間とバーチャル空間のものを融合した新しい表現方法を可能にする新技術「バーチャルプロダクション」を使用し制作されました。
MV監督には、トータルアートディレクションを目指した作品を数多く輩出し国内外の賞を数多く受賞しているYKBXさん。カメラマンには、プロフェッショナル集団「i7」の代表でもある井村 宣昭さん。バーチャル空間におけるシステムの制御にマッチムーブアーティストの加藤 泰裕さんを迎えチーム全体でまだ誰も見たことのない映像表現に挑んでいます。
制作時の苦労や見どころなど、ここでしか聞けないお話を伺いました。

MV制作ドキュメンタリームービー

バーチャルプロダクションとは

バーチャルプロダクションに関する図版
YKBXさんのプロフィール画像

監督
YKBX (HCA Inc.)

ディレクター、アートディレクター、アーティスト。
各種映像作品のディレクションや制作に加え、アートディレクション・イラストレーションやグラフィックデザインを行う。トータルアートディレクションを目指した作品を数々リリースしており、国内外の映画祭やイベントでも高く評価されている。
初音ミク・ボーカロイドオペラ「THE END」では、ルイヴィトンと衣装コラボレーションを行い、全てのビジュアルディレクション・ 演出・映像ディレクターを務め、パリ・シャトレ座を始め世界各国で公演された。
2014年ソチオリンピック公式放送オープニングを演出、2016年に安室奈美恵“NHK リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック放送テーマソング”「Hero」Music Videoを手掛け、2019年ラグビーW杯公式ソングLITTLE GREE MONSTERのMVをディレクション。
また、SMAPとのリアルタイムフェイスマッピングプロジェクトや安室奈美恵×GUCCI×VOGUEプロジェクト、攻殻機動隊 ARISE のオープニング、旧国立競技場クローズイベント映像演出や世界初 OculusLift を駆使した VRMusicVideo をリリース、「amazarashi」の全作品のアートディレクションを担当しており、2019年amazarashiの武道館公演『朗読演奏実験空間“新言語 秩序”』においてはアジア&国内最大のクリエイティブアワード「Spikes Asia」「ACC TOKYO CREATIVE AWARD」、文化庁メディア芸術祭で金賞を受賞した。

井村宣昭さんのプロフィール画像

カメラマン
井村 宣昭 (HCA Inc.)

ディレクター、カメラマン、撮影監督。
カメラマンとカラリストを抱えるプロフェッショナル集団「i7」の代表。
同社立ち上げ以前から撮影監督・カメラマンとしてB'z、AKB48、ONE OK ROCKなどの著名なアーティストのPVを多くを手がけている。
代表作は、TVCM UCC BLACK 無糖 桑田佳祐「大河の一滴」【男のブラック】篇
FINAL FANTASY XV 全世界で熱狂中篇 MV「安室奈美恵 - Hero」「ゲスの極み乙女。 - デジタルモグラ」「スピッツ - みなと」など。

加藤 泰裕さんのプロフィール画像

マッチムーブアーティスト
加藤 泰裕 (HCA Inc.)

フリーランスVFX、マッチムーブアーティスト。
CM、映画、ミュージックビデオなど数々の制作に携わる。
LiDARスキャナーを使ったプレビズ、撮影現場計測、マッチムーブ作業が得意分野。
MV「OK Go - Obsession」は「第63回カンヌライオンズ」のデザイン部門でゴールド。また、PlayStation4のゲームソフト「GRAVITY DAZE2」のCMは、「ONE SHOW 2017」でGold Pencilを受賞。MV「RADWIMPS - カタルシスト」「椎名林檎 - 鶏と蛇と豚」や近日公開予定の映画「太陽は動かない」「恋する寄生虫」など手掛けた作品は多岐にわたる。

HCA Inc.
(HYPESHELTER Creative Agency Inc.)

YKBX、井村宣昭、慶野幸司のコアメンバーからなる。
コロナや災害などあらゆる条件下でもクリエイティブを止めたくない。
さらに、萎縮することなく攻め続けるクリエイティブの聖地を作れないか。 何よりも、クリエイティブは人類の希望・夢を描くものであって欲しい。クリエイティブは誰かの生きる希望や人種関係なく共感できるツールであり 人類にとっては常に見失ってはならない目の前にあるべきものである。 これらの理念に基づき、VP事業を最大化するために結成された、クリエイティブエージェンシー。

自分たちのバックグラウンドにも通じる部分があった『進化論』

ーMVの制作はどんな形で行われたのですか?

YKBX:まず、今回のMVを語るにあたってバーチャルプロダクション(以下VP)そのものの必要性をお話できればと思っています。2020年はコロナをはじめとして人類レベルの問題が露出した年でした。自分が携わっているクリエイティブの分野にも大変な影響が出て、クリエイティブの必要性やクリエイティブが人々の希望になるという側面を非常に感じたんです。
クリエイターやアーティストがポテンシャルを注ぎ込めるポジティブな場所を作りたいと考え、VPを使ったチームの立ち上げを模索していました。
そんなタイミングで今回お声掛けをいただき、実験の最中ではあったのですが是非とも取り組みたいと考え新技術であるVPを使ったMVの制作をさせていただきました。

ー『進化論』だからこそできた部分はありますか?

YKBX:『進化論』の歌詞が進化していく中で自分の虚像に向きあったり、困難に立ち向かったりしていくものなのですが、そこが今回新しい試みをしているチームの動きと重なる部分があって。だからこそ、現実で再現できることではなく、もっと有機的に心理描写を見ることや変化していくシチュエーションや環境を見せることに長けたVPを使うことに踏み切りました。

撮影風景

アナログとデジタルの技術の融合で今までにないセッションが生まれた

ー制作にあたっての率直な感想を教えてください。

井村:面白い試みだなと思いました。これまで自分がカメラマンとしてさまざまなプロと一緒に蓄積してきたアナログ技術と今回加藤さんにお願いしたデジタル技術が現場で融合することがVPの大きな有用性なのではないかと。現場ひいてはアーティストの方々も一緒になってセッションができたことはVPならではの制作スタイルだと強く感じました。

加藤:今までは、撮影の後にポスト処理と呼ばれるCGやエフェクトの処理、コンポジットが入りやっと絵になるという工程を踏んできました。VPはその作業が現場でできるため、見え方がすぐに確認でき、現場の意見をその場で取り入れられることが最大の強みです。アーティストの方々もグリーンバックの撮影ではなく、背景が入り結果がイメージしやすくなることによってモチベーションやテンションも上がると思いましたね。

ーMV『進化論』の中ではどんな部分をご担当されていましたか?

井村:先ほど監督のお話にもありましたが、VPを使用して新しいクリエイティブの手段を作っていく一歩として各部署のプロフェッショナルを集めたチームを作ったんです。その旗振り役として、今後の撮影業界や撮影手法を一緒に作りませんか?と声掛けをしていきました。
監督がイメージや企画の主導権を握る人だとすれば、カメラマンは技術の主導権を握っていることが多くて。カメラマンとして何ができるかを模索しつつ、併せて本プロジェクトにおけるシステムの進行役を担当しました。

加藤:バーチャル空間におけるカメラの同期と、LEDウォールに出力する映像に関する部分のサポートを行いました。今まで自分が行ってきたポストプロセスが、リアルタイムになる部分は非常に興味深かったです。今回は、現場の動き含めて技術面の監修をしています。

撮影風景

誰も見たことのないビジョンを実現するために

ー制作にあたって苦労した部分を教えてください。

井村:とにかく、みんなはじめてのことをやるので各フローの担当者にアライアンスをとることが非常に大変でした。
次の工程に入るためのフローの整理に注力していたのですが、工程の部分に変更があると現場に持っていかなくてはならない成果物も変わってくるわけです。プロフェッショナルが集まっているため、各自の作業はスムーズなのですが撮影をする前の段取りの部分は特に苦労しました。

加藤:誰も見たことがない、やったことがないことをするので、そもそもどこから手を付けるのかから考える必要がありました。
顔見知りのスタッフが集まっていたのですが、その誰もが挑戦に対して前向きな人ばかりで『わからないけれど、まずはやってみる』という進め方で意見を出しつつセッションしながら作り上げていけたのはよかったですね。
自分はCGの見せ方部分でサポートに入っていたのですが、ひとつの絵をゴールにしてライティングや他の部分もサポートしつつ進めていきました。信頼できる人たちが集まったからこそ成功したのだと思います。

井村:開発の部分は毎日のように壁にぶつかっていましたね。現場やシステム、人との関わりなど、考えることが本当にたくさんあって。
苦難は多かったのですが、未来に向けてのビジョンが一致した仲間だったからこそ乗り越えられた部分は大きいです。これからVPを担っていく最初の一歩として大きく動けました。現場が一番『進化』したと言っても過言ではないと思います。

加藤:今回は時間が無くて出来なかった部分も、次に生かそうとする前向きな姿勢が常に現場にありました。撮影が始まって、3テイク目だったと思います。CGに音源と絵が入った状態でASCAさんが一曲歌った時に、現場で拍手が起きたんですよ。嬉しかったですね。やろうとしていることが半分ぐらいできたというか、泣きそうになりました。

ーMV『進化論』の見どころはどこですか?

井村:MVの中に、同じ場所で違う時間帯やシチュエーションが出てくる場面があるんです。
普通の撮影だったら、1週間粘ってようやく撮れるようなものなんですね。そういった絵とデジタルのシチュエーションが同じMVに入り、1曲の中で空間をダイブしていくような動きになっているところが見どころになります。
いろんなシチュエーションが繋がってひとつのMVになっている部分を是非見てもらいたいです。

加藤:自分は裏方なので技術がどこまで絵に反映されているかを伝えるのは難しいのですが、裏方だからこそ、このかっこいいMVに技術がどこまで絡んでいるのかが見えていない方がいいのではないかなとも思っていて。それこそ、監督の意図していることが表現できるようサポートしている部分が見どころではあります。

DAIVを使用しMVを制作

プロフェッショナルの現場を中心で支えるDAIV

ーVPを使用した制作で必要だったPCのスペックを教えてください。

加藤:正直、はじめはLEDウォールに映像を出力する場合どれほどの負担がかかるのか見当がつかなくて。なので、出来るだけスペックが高くなるように今回DAIVを選びました。
グラフィックスやメモリの追加を含めてカスタマイズ出来たので、プロジェクトの読み込みも早くて落ちることもなかったです。
カスタマイズの詳細としては、リアルタイムエンジンなのでどうしてもGPU(グラフィックス)の処理が大半になってしまう部分があり、今まで自分が使っていた2080系からアップグレードした3070系のビデオカードを使いました。

―DAIVが担当した部分はどこになりますか?

加藤:今回はデスクトップPCとノートPCの2台を違う役割で使用しています。
デスクトップPCは、LEDウォールへの映像の出力がメインでした。ここが止まると現場のすべてが停止してしまう重要な部分だったので、安定して運用できることを第一に考えていました。
ノートPCはリアルタイムエンジンの入ったデスクトップPCにカメラの位置情報を送る中継機として情報を記録するために使用しました。
リアルタイムエンジンの中で動いているカメラの具体的な位置情報を3D空間のカメラと同期させたうえで、現実世界のカメラに機材をつけ読み取る方法をとっています。

井村:全てのシステムの中心的存在と言いますか、一番真ん中の負荷が掛かるシステムの部分でDAIVを使っています。

加藤:ノートPCは、実働10日間くらいつけっぱなしでフル稼働だったんですが一度も落ちなかったので、大変タフなPCだと思いました。

ー今回使用してみてDAIVはどんな人たちに必要なPCだと思いますか?

井村:撮影の現場でのPCの活用方法は重い処理を現場で行ったり、現場で撮影のフォローをするために使ったりと、用途が多種多様です。だからこそ、いろんなバリエーションが必要となってきます。DAIVはさまざまなシチュエーションにも臨機応変に対応できるところが大きなポイントだと思います。

加藤:撮影現場は何十人もの人たちが集まっているため、数分のロスも惜しいんですね。そういった中で、一度も落ちず安定した運用できたことは魅力的でした。安定性を重んじる現場では特に重宝されると思います。
今回はデスクトップPCとノートPC1台づつの合計2台で進めましたが、運用の観点で考えると、やりたいことが増えていくにあたりひとつの役割に対して1台のPCを使うことも視野に入れて試行錯誤する必要があります。

撮影風景

デジタルとリアルが混合することで見える新しい世界

ーVPの技術は今後どんな表現の「進化」をもたらすと思いますか?

井村:今のVPは、「アナログ」「リアルな世界の近景とデジタル処理」「LEDウォールによるデジタル背景」を組み合わせています。
マシンスペックが向上していけば、現状リアルな世界である近景にCGを入れARを同時に行ったり、その内容をリアルタイム配信でユーザーに届けたりすることもできます。
それこそ、こちら側の一方的な映像の開示ではなくユーザーからのアプローチを反映させる、リアルとデジタルが混合した世界を相互関係で作り出すこともできるのではないでしょうか。
ユーザーとの新しい関わり方を創出することで楽しみ方も変化していくと思っています。

加藤:LEDウォールの使用方法は無限大です。だからこそ、LEDウォールの前に必ず人が立つ必要はないと思っていて。プレビズや撮影現場に行く前のシミュレーションとして使うことも今後あるのではと思っています。
今まで、現場でアングルチェックをしていたものをLEDウォールの前でするアプローチもできますし、カメラマンの人材育成として現場に行く前にどんなことができるかをテストするとか。映像を撮るだけじゃない可能性が秘められていると思います。

井村:撮影業界だけの話ではなく、例えばイベント会場で現場に行かないで現場のシミュレーションをしたり、医療現場で手術のシミュレーションをすることに流用したり、いろいろな使い方ができます。VPはエンターテイメントだけではなく、さまざまな業界に波及できるツールであると思っています。

加藤:できることが多いからこそ、アイディアがでるとトライしてみたくなりますね。

作業工程

MVの制作過程

工程1:設計

チームのスタッフィングに始まり、システムの構造を確認しチームごとに担当を振り分けるなどタスクの整理を中心に行う。

MVの制作過程

工程2:開発

整理したタスクに沿い、加藤氏にメインのリアルタイムエンジンを入れたDAIVでどこまでバーチャルプロダクションのシステムを組み込めるのかを確認・開発してもらう。並行して、各部署で必要素材やデータの制作やリアルタイムエンジン内に作ったLEDウォールに出力し系統の連動性を確認。 撮影部であれば、撮影とカメラの連動性をDAIVにどう落とし込むか連動させていくかを検討。その後各ポジションの内容を繋げていく作業へと進んでいく。

撮影風景

工程3:撮影

今までの撮影工程では撮影後に行っていたポスト処理も現場で行えるため、現場内で各部署とすり合わせをしながら進めていく。ポスト処理したものをLEDウォールに投影する作業を繰り返し、レンズのゆがみや視差を踏まえて細部まで調整していく。

完成したミュージックビデオ

DAIV X9

※参考スペック
OS:Windows 10 Home 64ビット
CPU:インテル® Core™ i9-10900X
メモリ:32GB PC4-25600
M.2 SSD:512GB NVMe対応
グラフィックス:GeForce® RTX 2070 SUPER™
拡張カード:Thunderbolt™ 3
電源:800W【80PLUS® TITANIUM】

※代表的な構成の一例です。
※当ページの掲載内容および価格は、在庫などの都合により予告なく変更、または終了となる場合があります。

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DAIV 7N

※参考スペック
OS:Windows 10 Home 64ビット
CPU:インテル® Core™ i7-10700
メモリ:32GB
M.2 SSD:1TB NVMe対応
グラフィックス:GeForce® RTX 2080 SUPER™
液晶パネル:17.3型 4K-UHDノングレア

※代表的な構成の一例です。
※当ページの掲載内容および価格は、在庫などの都合により予告なく変更、または終了となる場合があります。

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