AIをはじめとした最新テクノロジーは、教育現場においても導入・活用が着実に進んでいくことが予想されます。その前提として、教育の土台となる教員たちの働き方をいかに効率化し、子どもたちの学びをより豊かにするICT教育の推進につなげていくかが、ますます重要なテーマとなります。
2026年6月25日、長野県飯山市のマウスコンピューター飯山工場で、信州大学教育学部とマウスコンピューターによる包括連携協定の締結式が開催され、信州大学教育学部長の西一夫氏、マウスコンピューター社長の軣秀樹が協定書に署名しました。本記事では締結式の模様と、両者の目指すICT教育の未来をレポートします。
長野に根ざす両者の連携は「縁」であり「悲願」
今回の包括連携協定では、以下の5つの分野で連携を行うこととしています。
1.ICTを活用した教育分野に関する共同研究及び情報等の交換
2.先端技術を活用した教育環境の整備
3.両者における人材の交流及び育成
4.地域の活性化
5.その他、協定の目的達成のために必要な事項
信州大学教育学部とマウスコンピューターの両者は同協定の締結を機に、ICTを活用した教育分野での連携強化や教育環境の充実を図り、併せて地域社会の発展と人材育成に資する取り組みを推進すると発表されました。
教育業界では2026年7月現在、NEXT GIGAに向けた児童・生徒用端末の更新が進む一方、教職員の校務効率化や学校現場のDXにも関心が集まっています。こうした背景から、校務用パソコンの活用や、ゼロトラストを前提としたセキュリティ環境の整備が重要なテーマとなっています。
そうした状況のなか、最初の取り組みとして、マウスコンピューターから信州大学教育学部附属長野小学校・中学校・特別支援学校の教員向けに、約1.37kgの軽量設計でMIL規格にも準拠した堅牢仕様の14型ノートパソコン「MousePro C4」26台が配備されることになりました。この26台のパソコンは教員の日常業務や授業準備などの校務に利用されるのに加えて、その校務利用を基にした「校務におけるPC等IT機器の利用状況に関する調査」の共同研究も本格的にスタートされる予定です。
締結式を前に、まず西学部長が挨拶を行います。
「信州大学は現在、附属学校においてもDX化、校務改善を大きな目標として進めており、デジタル機器の活用が教員の業務や教育活動に資するものになると考えています。この雪深い飯山で作られたパソコンを、信州の未来を担う子どもたちの教育現場で活用できることは、信州大学にとっても深い縁を感じています。ひいては、その成果を全国の教育現場にも発信していきたいですね」
続けて、軣社長も次のように挨拶しました。
「長野市出身の私にとって、信州大学との連携協定締結は悲願でした。教育現場でICT教育に苦労されている中、当社のパソコンが少しでも先生方の助けになればと思います。また、教育現場で当社のパソコンを先生方に使っていただき、定期的なアンケートや座談会などを通してフィードバックを頂戴することで、新たな製品開発にもつなげていきたいと考えています。
今回の協定締結は両者の取り組みのスタートであり、教員の働き方改革やICT教育の推進について、信州大学教育学部と一緒になって進めて参ります。さらに、今後はAIが教育現場でも多く使われるようになるでしょう。そのため、AIエージェントを含めた共同研究にも取り組んでいきたいと考えています」
教員が日々使う校務用PCの理想形を共同で追求
協定締結のきっかけとなったのは、長野県飯山市に工場を持つマウスコンピューターと連携し、最新のテクノロジーを教育現場で活用することで、学校教育のさらなる充実につなげられるのではないかと、信州大学教育学部の職員が着想したことでした。そこで教育学部側から展示会などを通じてマウスコンピューターに働きかけ、今回の協定締結が実現しています。
西学部長は、配備された26台の「MousePro C4」を教員が校務に利用することで期待する効果として、こう話します。
「校務用パソコンは常に机の上にあるわけではなく、校内でも職員室と教室を行き来しますし、校外でも使用することがあります。こういった教育環境全体を見たとき、教員のパソコンはどういったものであるべきか、どのような性能・機能・堅牢性を備えているのが望ましいか、実証的な実験をしながら効果を測定していきます」
軣社長が冒頭の挨拶でAIに関する共同研究にも触れましたが、現在、信州大学教育学部附属学校においては「一人一台の端末で、インターネットに接続して情報収集するといった活動は、日常的な学習の中ですでに行われています。そのうえで今後のAI活用に向けては、情報リテラシーが重要になっていくでしょう。そこで、リテラシーを持った教員が児童・生徒の教育にしっかり対応できるよう、学校としても支援を進めています」と、西学部長はAI活用の現在地を紹介しました。
学生の組み立て体験も行われ、今後の連携発展に期待
締結式に先立ち、軣社長が西学部長や信州大学教育学部職員に飯山工場内を細かく案内している様子もみられました。
さらに、教育学部 学校教育教員養成課程 現代教育コース ICT活用教育ユニットの学生2人が、今回配備されるノートパソコンの組み立て工程の一部を体験しました。
2人の学生はマウスコンピューター社員の指導を受けながら筐体のネジを緩め、内部にメモリやSSDを装着しては、再びネジを締めていきました。最初にネジを緩める際は2人とも緊張した面持ちでしたが、筐体の傾きがある部分のネジについては「ドライバーを斜めに当てるのがいいですよ」といった社員のアドバイスを聞き、順調に進めていきます。
電源を入れてWindowsが起動されると学生たちも安堵の表情を浮かべ、パソコンが組み立てられていく工程を初めて目にし、さらに自分たちの手で完成させた達成感もあって、最後には緊張が解けて笑顔もあふれていました。
この組み立て体験について西学部長は、「今回はICTユニットの学生ということで、おそらく使う側の目線でノートパソコンの内部に触れていたと感じました。教育学部にはものづくりに関する技術教育を学習している学生もおり、そうした学生であったらまた異なる技術的な目線で組み立てを楽しんだことでしょう。今後も教育の一環として、本学部のさまざまな学生に組み立てを体験してもらう機会があるのではと思います」と今後の期待を口にします。
協定締結でスタートした信州大学教育学部とマウスコンピューターのこれからの歩みが、ICT教育と子どもたちの未来にどのような影響を与えられるのか、今後も注目です。
