浅野いにおさん 浅野いにおさん

漫画家
浅野いにお

SPECIAL INTERVIEW

技術の進化、時代の変遷、
自身の成長……。
20年目のいま抱く、漫画観

イベントポスター

20周年企画展のために描き下ろした
オリジナルキービジュアル

『ソラニン』、『おやすみプンプン』、『零落』、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』……。数々の話題作を描いてきた漫画家・浅野いにおさんは、デジタル作画を早くから取り入れていたことでも知られます。
今年デビュー20周年を迎える彼に、漫画にPCを使い始めた経緯や、そのことに対して世間から届いた反応を振り返ってもらいつつ、デジタル作画の浸透が漫画業界や作家のキャリアに与える影響についての考えをお話いただきました。作品ごとの作画意図を語った貴重な動画とともにお楽しみください。

浅野いにお近影 浅野いにお近影

浅野いにおさん
漫画家

twitter instagram

青年漫画誌などで活躍する漫画家。2002年『素晴らしい世界』で連載デビュー以来、実写映画化された『ソラニン』、主人公を記号化した問題作『おやすみプンプン』、漫画家の業を描いた『零落』など話題作を多数執筆。現在は「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』を連載中。
デビュー20周年を迎え、画業20周年企画『浅野いにおの世界展』を2018年12月21日(金) 〜 2019年1月14日(月)池袋サンシャインシティ・ホールAにて開催予定。

公式SNS: twitter instagram

SPECIAL MOVIE

スペシャルムービーサムネイル

PLAY A VIDEO

『ねじ式』を読んで、
漫画の自由さを知った

漫画を描き始めたのは高校生の頃です。もともと漫画っ子ってわけじゃなかったんですけど、友達の影響でつげ義春さんの『ねじ式』を読む機会があったんです。不条理漫画とも言われてる作品なんですが、自分の知っていた漫画とぜんぜん違ってて、漫画ってこんなに自由なんだって発見があって。こんなものを自分も描いてみたい、もっと言っちゃうと、描けるんじゃないかなんて思ってしまって。小さい頃から絵は好きだったし、ちょうど勉強に興味を失っていた時期だったし。
それで、1時間の授業中に4コマ漫画を1本描くことをノルマにしました。友達に見せて評判が良かったのもあって、勢いで原稿用紙を買って、ちゃんと作画して。17歳のときにはじめて編集部に持ち込みをしたら、そのときたまたま休載の枠があって、運良くいきなり掲載されてっていうのがデビューの経緯ですね。でも幸運は続かなくて、そこから4年くらいは不遇の時期でした。何を描いても掲載されないし、担当者とも折り合いが悪いしっていう期間がありました。その頃はもう担当者に忖度していましたね。自分が描きたいものというよりも、担当者が気に入りそうなものに寄せていっていました。

「根暗さ」に安心する人も、きっといる

初期に限らず、20年間で自分の考え方や技術面はわりとコロコロ替えてきたほうですが、唯一変わらないのは「根暗さ」ですかね。この暗さだけはいつまでも変わらんなって思います。「根暗さ」って万人受けするものではないですが、それを求めている人もいると思うんです。僕自身、そのときに流行っている作品じゃなくて、それこそつげ義春諸作品をはじめとするマイナー調の作品に惹かれたのはそういう部分で。根暗さだったり、卑屈さだったり、ネガティブな部分が描かれていると、こういう考えの人が自分以外にもちゃんといるんだってことに安堵したというか。
「万人から好かれる」ような作品が描きたいって思ってた時期もありますよ。単行本デビューした当時が2ちゃんねる全盛期だったので、ものすごい数の批判にさらされて。やっぱり普通に傷つくので、嫌われることへの拒絶反応みたいなものはずっとあります。でも、長く漫画を描いてて思ったのは、漫画って結局は作者の人柄が出るものだなって。取り繕って描いても、素が出てしまう。だいたい、「万人から好かれたい」って言ってしまうような作者の人間性って、底が知れてるようなものですけど。

“コストカット”という、
現実的な課題からはじめたPC作画

作画の流れをざっくり説明すると、最初に大まかなプロットというか、セリフのたたき台みたいなものをテキストで書き出します。それをもとにデジタル上で漫画ってネームを切ります。コマ割りと吹き出しやキャラクターの立ち位置とか構図を決める工程ですね。プラス、僕の場合は背景に写真を使うことが多いので、何の写真を使うのかもネームの時点で決めます。そのあと、背景の写真をデジタルで漫画の背景として使いやすいように加工して、プリントアウトして、そこにアナログのペンで描き入れていって。最後はそれをスキャンしてPCに戻して、スクリーントーン風の加工をして仕上げています。
PCを使い始めたのは漫画家の中でも比較的と早いほうだったと思うんですが、これは実はけっこう現実的な理由からです。新人の頃って、ホントにお金がなくて。アシスタントさんを雇うわけにはいかないし、スクリーントーンを買ってもけっこういい値段がしちゃう……。最初はデジタル上でトーンを再現できたらコストカットできると思ってはじめたことでした。写真を背景作画に使い始めたのは、デジカメの性能が良くなったことがきっかけですね。あれ、これは使えるんじゃないかって思って試してるうちに、今のスタイルになりました。

作画手法は、
ストーリーやセリフ回しにまで影響する

写真加工で背景を描き始めたときは、手抜きじゃないかっていう批判をいろんなところから浴びました。一般の方からもそうだし、業界内からも。もともと効率化を考えてはじめたことなので、手抜きと言われれば手抜きです。でも、この手法ならではの効果もあると思っています。
たとえば、リアルな背景を多用すると、言葉で説明しないといけないことが減ってくんです。部屋の散らかり方をリアルに描くと、そこに住んでる人の性格とか、その部屋で起きたこととか、読者が汲み取れる情報が増えます。そこではじめて成立するストーリーとか演出があると思っていて。吹き出しだけ追いかけてたら唐突に聞こえるようなセリフが、リアルな背景があることですんなり成立してしまうとか。作画手法ではあるんですが、見た目だけに影響があるわけじゃなく、台詞回しやストーリーの作り方にまで影響してる部分はあると思います。
上の世代の先生たちが、すごい時間と技術を費やしてハイクオリティな背景を描かれてきたことは間違いないわけで、僕には真似できないです。ならばいっそ、効率化してできた時間を、他の作家さんがやっていないような実験的な試みに使うしかないかなと。でもその実験が受け入れられるかどうかは読者次第なので、実はけっこう怯えながら描いてる部分はあります。手抜きという指摘に対して、開き直れたことはないですね。

素人から挑戦した
3DCGモデリング

もうひとつ、僕の作画の中でPCを使う工程が、3DCGのモデリングです。もともとはキャラクターの部屋を写真加工で作画しようとしたときに、その当時のデジカメの性能的に、暗い部屋での画質がイマイチで使えなかったことがきっかけです。CGなら、光源も自由だし、ものを動かすのも簡単だし、作ってしまえと思って。
3DCGの知識は全くなかったので、リフォーム業者の方なんかが使う、建物を簡易にシミュレーションできるソフトを使っていたんですが、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の連載中に本格的に3DCGの勉強をはじめました。作中に登場する“母艦”っていうUFOは、ブロックおもちゃでモデルをつくって、それを写真に撮ってビル群の写真に合成するというフローで漫画にしていたんです。でも、小さなおもちゃを撮った写真と、ビル群の写真って遠近感がぜんぜん違うからパースが合わなくて不自然で。ブロックがところどころ壊れはじめたこともあって、一念発起して3DCG化することにしたんです。『母艦』一つ完成させるのに半年以上かかったかな。まだまだ初心者ですが、これをマスターできたら相当おもしろいことができるぞっていう感触はありますね。

「クリエイター向け」という
言葉の分かりやすさが良かった

3DCGのモデリングにはDAIVを使っています。3DCGの編集ソフトは現状、Windowsマシンのほうが相性がいいので、最初からWindowsに絞って探しました。DAIVにしたのは、分かりやすく「クリエイター向け」って書いてたからです(笑)。あんまりPCには詳しくないので、自分のような人間に向けて調整されているんだろうっていうのがハッキリ分かるのは安心感がありましたね。
機能をフル活用するような最先端の使い方をするわけではないので、スペックに関してはそこまで細かくは見ません。気にするポイントでいうと、ストレージの容量とグラフィックボードです。CGはファイルサイズがどんどんかさんでいくので、できるだけ容量が大きいほうがいいとは思います。どこまでコストをかけるか次第ですが。グラフィックボードの選択は、用途によりけりみたいですね。CG制作でいうと、僕はゼロからモデリングすることもあれば、ゲームエンジン※を使うこともあって。ゲームエンジンの場合はGeForceというグラフィックボードが向いていると言われていて、本格的なモデリングやレンダリングにはQuadroという専門的なグラフィックボードがいいそうです。僕はそこまで負荷のかかることをしてないので、あんまり差を実感できてはないんですが。Quadroが選べるメーカーって少ないんですが、DAIVはしっかりラインナップに入っています。本格的な3DCGも使いたい場合は、DAIVはいい選択肢なんじゃないですかね。

※ゲームエンジン:ゲーム開発に使われるソフトウェア。ゲームタイトルに関わらず共通して用いられるような表現、例えば「光の反射」や「雲の流れ」などをパッケージ化し、効率的に制作することを目的とする。ゲームエンジンを活用することで、共通表現を1からつくる必要がなくなり、そのタイトルのオリジナルな部分の開発に注力できる。

作家は、上手くなりすぎないほうが
いいのかもしれない

今はもう、デジタル作画も当たり前になっています。ネットにすごく丁寧なチュートリアル動画がたくさんあるので、若い人の上達速度もすごく速い。あっという間にプロ並の技術になれちゃうし、僕なんかより絵が達者な人が大勢います。
ただ、上手くなりすぎるのも、作家としては考えものかもと感じるときもありますね。なぜかというと、“誰からも上手いと思われやすい絵”って方向性が絞られるし、そうでなくてもチュートリアル動画のバリエーションには限りがあるから、それを見て絵を勉強すると、みんなの絵柄がすごく似てきちゃうなと思っていて。けど、クセのない絵柄のほうが、みんなのものになりやすいというか、二次創作の元として魅力的だし、商業的には発展させやすいってメリットもあって、一概に悪いこととは言えないんですけどね。
漫画って、漫画以外だと小説もそうですが、もともとほぼ一人でつくるじゃないですか? 逆に、映画とかゲームとかって人が大量に関わりますよね。もちろん監督とかプロデューサーの意向が一番強く反映されている作品もあるんでしょうけど、全体で見ると、やっぱり均されていくというか、角が取れていってしまうという現象も必ず起きると思います。僕は作家個人の意向が濃く残ってる作品に触れて漫画を描き始めたので、そんなわがままな作品も残したいなって思います。

20年続けた今だから、
描きたい漫画

20周年ということで、12月に原画展をやらせていただきます。ポスタービジュアルは、過去のキャラクター全員集合っていうシンプルなものになりました。僕の漫画のキャラクターって、いわゆるキャラっぽくないキャラクターも多いので難しいかなとも思ったんですけど……。過去作を振り返ってみたときに、思い入れのあるキャラクターがたくさんいるなって思って、もう何にも考えずに全員描くかってなりました。ピックアップしたら50人超えちゃって、描くのが大変でしたが(笑)。
卑屈な言い方になってしまいますが、漫画賞みたいなものを1回もいただいたことがないんです。だから20周年なんかやろうよって言われたときも、祝われ慣れてなくて気後れしたんですが、漫画家としてお祝いいただける機会ってほかになさそうなので、せっかくだしと思ってやることにしました。
いままでずっと、辞めたいっていう気持ちと、でも辞められないって気持ちが裏腹にありつつ、ずるずる来てるんです。ハッキリともう辞めたいと思ったことって、なんだかんだないんですよね。今後描きたい漫画の方向性は2軸あって。あんまり言うと実現できなかったとき恥ずかしいですが、1つはCGを全面に出した漫画で、もう1つはしっかり取材してつくったストーリー漫画ですね。私生活とか自分の内面を切り売りするような作品はもう疲れたので。話のネタは内面じゃなくて外側に求めていかないと僕の人生がもたないので、なるべくそういう作り方をしていきたいと、そんな風に考えています。

浅野いにお特別

画業20周年記念企画 
浅野いにおの世界展〜Ctrl+T2〜

12月21日より東京・池袋のサンシャインシティにて、漫画家 浅野いにお氏の画業20周年を記念し、20年間で出版されたすべての作品を展示する初の大規模展示会を開催することが決定!
この展示会では、大ヒット作の『ソラニン』のネームや、浅野氏が初めて出版社に持ち込んだ原稿などを初公開。原画はもちろん、浅野氏のインタビュー映像や漫画の中に出てくる洋服の展示等、見どころが盛りだくさん。このイベントのために浅野氏が描き下ろした、全作品から総勢50キャラ以上が大集合したイラストにも注目。

日時
2018年12月21日(金) 〜 2019年1月14日(月)
12:00 〜 19:00
休館日
2018年12月31日(月)、2019年1月1日(火)
会場
池袋サンシャインシティ ホールA
チケット
一般・前売 800円/一般・当日:1,000円
特典付前売:1,300円
中高生・前売:600円
中高生・当日:800円 ※すべて税込
主催
「浅野いにおの世界展」実行委員会
詳細はこちら

『浅野いにおトークショー 20年で培った、独自のCG作画を生実演!』
協力:マウスコンピューター

日時
2019年1月5日(土)
15:00 〜 16:00 トークショー 
参加条件
トークショー:料金3,000円 / お土産付 
※本展覧会への入場料を含む金額です。
※応募多数の場合は抽選となります。
出演者
浅野いにお
内容
浅野氏の代名詞であるCGを巧みに操り、イラストを創り上げる手法!今回はその手法の一端を披露しながら、画業20周年を迎えて、さらに進化し続ける作品の世界を語ります。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』に登場する母艦の作画工程など、普段の浅野氏の作画風景も垣間見える!? 
このトークショーをぜひ、お見逃しなく!!
会場
ワールドインポートマートビル5F 
コンファレンスルームRoom6〜9 

トークショーお申込み:
11月22日(木) 18:00 〜 12月5日(水) 23:59

12月10日(月) 15:00 当落発表 / 即引き取り可能
12月17日(月) 23:00 入金期限

*応募多数の場合は抽選となります。
*参加者には特典がつきます。
*サイン会の参加には本展覧会にて先行販売される画集「Ctrl+T2」の購入が条件となります。当日ご購入いただいた方の中から抽選でサイン会にご参加いただけます。
*サイン会の参加方法については、後日当サイト、公式Twitterで告知いたします。

詳細はこちら
DAIV-DGX750シリーズ

DAIV-DGX750シリーズ

様々なクリエイターのニーズに、
高い拡張性で応えるハイエンドPC

「DAIV-DGX シリーズ」は、最大18コア36スレッドCPUを搭載可能なクリエイターによる、クリエイターのためのパソコン(PC)です。GeForce® GTX グラフィックスがもたらす高い描画性能が4K動画の編集時間を短縮、マルチコアによってDTM/CAD/3DCGなど様々なクリエイティブシーンに使用することができるデスクトップパソコンです。

※浅野いにおさんが使用しているモデル(DGX700U4)は販売が終了しており、リンクは同等製品へのご案内となります。

商品詳細を見る
ProLite B2875UHSU

ProLite B2875UHSU

28型 WLEDバックライト搭載
ワイド液晶ディスプレイ

フルHD画面の4倍の大領域を一度に表示することができる4K(3840×2160)解像度に対応していることを特長としており、約830万ピクセルの圧倒的な鮮明さと緻密さ、シャープさが表現可能となっています。

商品詳細を見る

写真、画像、デザイン編集ソフト

Adobe photoshop

Adobe Photoshop

Adobe

商品詳細を見る

総合3DCGソフトウェア

Adobe photoshop

3DS MAX

Autodesk

商品詳細を見る