ぷす:『過去に囚われている』。曲名の通り、「昔はよかったのに、なぜ今はこうなってしまったんだろう」って、誰もが一度は抱いたことがある感情なのかなと思っていて。歌詞も「今」というキーワードを入れて、より過去と対比させています。
曲を作る原動力でもある大元の土台はギターで、もう10年くらい弾いています。基本的にはパソコンで完結するのですが、生の臨場感を出すために、特にギターの音にこだわっていますね。ギターアンプをどーんと置き、マイクを2つ立てて爆音を出して、パソコンでギターを取り込み、スタジオクオリティでしっかり録る。
歌詞もできるだけ耳障りがいい語呂になるようにして、後からメロディを整えています。よりサウンドに新鮮さを生み出すためにも、パソコンの中だけで完結するのではなく、デジタルの良さと現実世界の温かみを混ぜています。
昔はノートPCを使っていたのですが、動作がすごい重くて。複数のソフトを開けないと、使える音数も減ってしまうので、いい曲が書きづらくなってしまうんですよ。でもハイスペックなデスクトップPCにしてからは、好きな楽器を好きな場所に使えるようになって、曲のクオリティが格段に上がったと思います。今回、使用した「DAIV」もそうですが、ストレスのない環境で集中して制作できることが、いい曲作りにつながっていると思います。
『ツユ』は事務所やレーベルに入らず、作品制作をはじめ、ライブやCDもできるだけメンバーの中だけで完結するようにしています。どこにも縛られず、「好きなときに好きなように作品を作れる」のが一番ベストだと思っているので、自由で制限がないのがいいですね。結成する前は僕一人で音源を完結させていたのですが、今はピアノを弾いてくれるメンバーもいたり、より理想的な状態で世の中に作品を出せる。一人では到底辿り着けないクオリティで、作品を作ることができるんです。
今 私は息を吸っている
今 普通の生活送って
今 私は上を向いている
今 飛行機が飛んでるわ
今 あの雲を追いかけたくて
ぽぷりか:『過去に囚われている』の楽曲が持つメッセージに対しては、実は全面的には共感できていなかったんです。できるなら自分の人生にポジティブでいたい。でもどこか楽曲に共感できる部分を探したくて、昔ネガティブだった自分を思い出してテーマを決めました。「過去に比べて、今の自分は劣っていると思ってしまっている」と思い込む子を描きたかったんです。でも歌詞とテーマは暗いけど、聴く人を暗くさせたいわけじゃないから。映像はぱっと見は明るく、ポップに見せようとしています。
まごつき:そう言った意味でも、黄色をメインカラーにして、二面性を表現しています。黒色と組み合わせると警戒色にもなるので、主人公の精神状態が窮地にあることも知らせられる。ぽぷりかの方から「二面性のあるキャラクターにしたい」ということだったので、キャラクターは白と黒をベースに、見た目は同じだけど色だけ反転させています。それ以外にもキャラクターの性格や絵面をはじめ、アートワークや画面全体のグラフィックを私の方でまとめました。
今 走ろうにも動かなくて
今 立ち止まって何になるんだ
だって「今」は空っぽだから
ぽぷりか:映像を作る上で、今回、使用した「DAIV」のようなハイスペックPCのよさは、速さの違いですかね…3DCGソフト「Blender」で作業するとリアルタイムに結果が表示されるので、単純に試行錯誤がたくさんできるんです。トライアンドエラーの回数が上がること=クオリティのよさに紐づくので、処理が速いことで画もよくなる。さらに、レンダリングに細かい待ち時間が発生しないので、ずっと集中したまま作業を続けられて、いいことだらけだなと思います。
『Hurray!』の映像制作は、今は僕が最初にテーマや大枠となるものを作って、まとめ役も担っていますが、これから先はもっと作業の分担を広げていくつもりです。もともと「ここ作るからあなたはここ作って」という流れ作業のチームではないのです。
まごつき:3人の距離感や好きなものが近いので、かなりラフの段階からイメージを共有しても意図がちゃんと伝わるし、お互いにいいフィードバックができるんです。
ぽぷりか:めちゃめちゃ褒め合う文化あるよね。無理してやっているわけでもなくて、3人で作るのが素直に楽しいって思えるチームだなって実感しています。
だって「今」は空っぽだから
空っぽだから
ぷす:何年も前から『Hurray!』のクオリティの高い動画作品に憧れていて、別の世界の人だと思っていたんですよ。なので、お声がけしたら受けていただけるということで、感動しました!
ぽぷりか:そう言ってもらえて嬉しかったです!「ミュージックビデオは音楽ありき」みたいなイメージもあって、映像を作っている僕らにスポットライトが当たっていると思っていなかったので…。いきなりですが、ぷすさんは、普段どのぐらいの期間で楽曲を作っているんですか?
ぷす:基本的にはアイデアが閃くまでパソコンで曲を聴いたり面白いものを探したり、がほとんどです。閃いたものを形にする時間は1ヶ月のうち2、3日なので、もう自由ですね。
ぽぷりか:めちゃくちゃいいですね!今回の場合で言えば、映像ってグラフィックを決めてキャラクターから最終の1枚画に至るまで、もう1ヶ月くらいかかるわけですよ。それでも続いているのは単純に楽しいからなのですが、苦ではないにしろ長いですね…。3日で終わるんだったら、1ヶ月に6本くらい作れるじゃないですか。
ぷす:そう思いながらもずっとやれているのは、すごいなって思います!僕の場合は自発的に0から出すからか、焦りがちかもしれないですね。安定していい作品を出していきたいのに、煮詰まってしまうこともあって。普段聴かないジャンルの音楽を聴いたり、YouTuberの動画を見たりと、空気の入れ替えをしているうちに、やっとリセットされるような。
ぽぷりか:僕は「依頼をいただいて、期限までに作品を作ります」って生き方をしているので、悩み続けることはできないのですが、むしろ期限を延ばせられない方が気が楽なんですよ。「今回は僕のできる精一杯だったから、できなかったことは次回にやろう」って次につなげて。だけど、自主制作は期限がないからこそ、どこまでもこだわれてしまう。それはそれでしんどいだろうなって思うんですよね。
人生 人生 人生とか
疾うの昔に完成してんだよ
ぷす:音楽は僕にとって人生ですね、完全に。自分を一番表現できるのが音楽だった。昔は音楽だけじゃなく、色んなジャンルの物事に積極的に手を出していたけど、そこまでしっくり来ないことが多くて。でも最近になって過去を振り返った時に、その横を「音楽だけがずっとつたっていた」というか。そう気づいてからは、もう一生音楽で食って生きてやるぞって、はっきり決まって。
振り返ることでしか証明しようが無いよ
振り返ることでしか
証明しようが無いよ
ぽぷりか:僕は自分で自分をすごいと思いたかったんですよ。じゃあ「どんな人になりたい?」って考えたときに、何かを作れる人になりたいって。それで周りを見渡したときに、映像が全部を含んでたんですよね。つまり、文章も絵も音楽も、もちろんアニメーションも、実写も入る。すべてが箱の中に入った総合芸術感がすごい好きで、映像を始めたんです。
ぷす:今はネットが発達してるからこそ、誰にでもチャンスがあるわけで。家で曲を作ってYouTubeにアップしたら、もしかしたらそこで一発、何者かになれるかもしれない環境が誰にでもある。
ぽぷりか:でも、手軽に創作ができる環境だからこそ、どんどん作れる人が増えていって「誰もが価値がない」となるのは嫌だなと思っていて。できたら誰もがチャンスがあって、何者かになれる可能性がある方がいいなと。
君も地位も全て失った今だ
君も地位も全て失った今だ
ぷす:そうなると、本当に好きなものを見つけることが大事ですよね。24時間ずっと好きなことを考えて、手を動かして、じわじわと自分の目標に近づいていく。これから始めたい人は、本当にひたすら引きこもってやってください。家から出ずに、全てを注ぐ。狂気じみたものが必要です(笑)。
ぽぷりか:それに加えて「ちゃんと本当にそれが好きか?」を確認してほしくて。もしどこか疑問符があるのなら、それはやめたほうがいい。本当に好きでないものを24時間考え続けることは辛くて無理だから。
もし、「24時間考えても全然苦じゃないです」って自信を持って言えるものが見つかったら、狂気じみてやればいい。そうすれば、いいものができると思うし、誰かに見てもらえると思うから。