Creative is
beside computer.
〜桐島ローランド篇〜

3Dエヴァンジェリスト / フォトグラファー
桐島ローランド

戦前の港町の雰囲気が残る北九州市門司港(もじこう)を代表する歴史的建造物・旧門司税関。そこをフォトグラメトリーとドローンという先端技術でスキャンし、VRコンテンツを製作した桐島ローランドに密着した。

実物の旧門司税関

3Dデータ化した旧門司税関の外観

プロジェクトの背景

天災の多い日本では、熊本地震における熊本城石垣崩落に見られるように、歴史遺産が地震や台風などによって失われることは珍しくない。多くの場合、そうした建造物は設計図が遺っていないため、再建も難しい状況にある。一方で、近年の技術発展により、建造物の構造を、3Dデータとして精密に測定することが可能になってきている。

長年、フォトグラファーとして活動した実績をもとに、近年では、そのノウハウを引き継ぎ、フォトグラメトリースタジオ「AVATTA(アバッタ)」を経営する桐島ローランド。
小倉城やインドの巨大遺跡などを3Dデータ化した実績はあるが、今回は初めての試みとして、外観/内観を組み合わせたVRコンテンツ化を行った。3DデータにVR(Virtual Reality)のテクノロジーを組み合わせることで、重要文化財などの保存や修復時の再現、また没入感のある体験が可能なことから観光資源としての活用の期待がより高まっている。

巨大建築物のスキャンから3D化の過程に密着し、
本プロジェクトで使用した、クリエイター向けPCとしてのDAIVの使用感、
写真を軸にして、テクノロジーの未来を見る彼の展望をドキュメンタリー映像で語ってもらった。

VRコンテンツ製作の工程

工程1:フォトスキャン

建物内部を撮影。
手持ちのカメラ及び高さのあるポールに複数台の一眼レフカメラを取り付け、内部をもれなく撮影していく。

工程2:レーザースキャン

測量技術を応用して、内部をレーザーでスキャン。
各角度に対して、機材をまわし、スキャンを実行していく。

工程3:ドローンスキャン

ドローンを用いて、上空からの空撮で撮影。
座標を緻密に計算し、データ欠損のないように各方位から撮影。

工程4:データレビュー

現場にて、ノートPCを用いて仮でデータ結合を行う。Reality captureを使い、データ欠損の有無やデータの精密性を検証していく。
大量のデータを結合するために、高いマシンスペックを要求するが、DAIVのノートPCでは現場でも快適にデータレビューを行うことができた。

工程5:スキャンデータの3D点郡化

撮影終了後、データを持ち帰り、作業をデスクトップPCに移行。
レーザースキャンの内観データとフォトグラメトリーの素材を取り込み、それぞれ別々にReality captureを使用して3D点群化していく。

工程6:レーザー/フォト3Dデータの合成

外観のフォトグラメトリーのデータと内観のレーザースキャンのデータを合成していき、建物の骨格をつくっていく。細部のポリゴンはMaya/3DMAX等の3Dソフトを用いて調整していく。

工程7:3D化したモデルへのテクスチャ張り込み

骨格が形づくられたデータに対して、細部のテクスチャをひとつひとつテクスチャソフトを使い作り込んでいく。
この工程ではVRデータ化した際の世界観を考慮して、ライティングなどの細部も調整していくことで、今回のような写実レベルのデータが再現できる。

工程8:ゲームエンジンへ搭載/デバック

テクスチャ合成済みのデータをゲームエンジン(今回はUnreal Engine)に載せ、VRコンテンツ化する。
VR化後、実際にoculusで閲覧し、壁の通り抜けや、ライティング等を閲覧し、細部をデバックしていく。動作検証後、問題なければ完成となる。

今回のプロジェクトの背景は、Webメディア「WIRED 」でも取り上げられています。

写真家が率いる「小さなチーム」が、
門司の文化遺産をVR化したワケ

桐島ローランドさん

1968年横浜生まれ。小学校3年でNYへ移住。
ニューヨーク大学・芸術学部写真科を卒業。
ニューヨークで写真家として活動を始め、1993年、活動の拠点を東京に移す。
以後、多くのファッション誌のレギュラーを持ち、広告とエディトリアル他分野で活躍。
2014年に日本初のフォトグラメトリースタジオAVATTA(アバッタ)を設立。

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